戦争

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『戦争』表紙\

書籍名   : カナダの文学・4
        戦争
        (センソウ)
著者名   : ティモシー・フィンドリー(ティモシー・フィンドリー) 著
発行日   : 2002-01-10
税込価格 : ¥2625
本体価格 : ¥2500
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★「ミステリマガジン」4月号 風間賢二
「カナダではフィンドリーはアトウッドやオンダーチェと肩を並べる大御所だ。その現代カナダ文学界を代表する作家が国内外で絶賛され、特異な才能\が認められた作品が一九七七年に発表された本書である。物語をひとことで述べれば、\”一人前の男になる”ために第一次世界大戦に従軍したものの、地獄めぐりとでも称すべき戦場で一連の成長の儀式を経て無垢を喪失し、やがて破滅していく青年の悲劇といったところ。多くの戦争小説が共有する教養小説のパターン─無垢・経験・考察─は、本書でもしっかり押さえられており、同様にお約束の凄惨かつ非人道的な戦場シーンも語られている。
 戦争小説といえば、風間的には、ヘミングウェイの『武器よさらば』やメイラーの『裸者と死者』などではなく、セリーヌのグロテスクで凄惨な『夜の果ての旅』、ジョーゼフ・ヘラーの不条理でプラックな笑いに満ちた『キャッチ=22』、ティム・オブライエンのシュールで幻想的な『カチアートを追跡して』などが想起される。残念ながら本書にはそうした風間好みの要素はないが、かわりに巧妙なナラティヴがある。多くの戦争小説は歴史小説でもあるので、作家は史実を素材に作品にリアリティをもたせる。本書では、生存者の証言、古い写真、記録文書、日記などをもとに調査した青年将校の半生を、現代に生きる「第三者」が読者に語るという構成になっている。もちろん、本書は純然たるフィクションだ。でも、われわれが知る\”事実としての歴史”というのは、つまるところ、生存者の証言、古い写真、記録文書、日記といったテクストから歴史学者が解釈を加えて織りなしたものにすぎない。表象の表\象というわけだ。となると、事実と虚構のちがいはどこにあるのか? テクスト化された歴史なんて、その本質は小説とかわりない。本書の語りロはリアリズムに徹しているが、実は、ヒーロー伝説であり、一種の騎士道ロマンスなのだ」

★朝日新聞、2/10 堀江敏幸
「フィンドリーのアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作『嘘をつく人びと』を読んだのは、もう十年以上前のことだ。ミステリとしてはいささか重いけれど、そのぶん厚みのある秀作だった。
この『戦争』の原著刊行は、1977年。『嘘をつく人びと』のそれが八六年だから、読者はフィンドリーの作家としての成長ぶりを、良い意味で遡行的に味わうことができる。章立てや小見出しのかわりに振られた通し番号、複数の証言者の目でひとつの出来事の空白を埋めていく、いわば外縁から中心部にむかって言葉を投げる手法の類似性に既視感を覚えながらも、前者が後者よりも若くて青い、未熟だが読みやすい、といった言い方をまったく無効にするだけの完成度があることを認めなければならない。第一次大戦に参戦したカナダの青年将校が、この物語の主人公である。フランスの地で、ドイツ軍の放つ 毒ガスと足下をすくう泥濘に満ちた戦場をくぐりぬけ、死地をさまよっていたあるとき、彼は敵の砲撃から厩舎の馬たちを救うためそれに反対する上司を殺し、脱走して追われる身となる。だが、いったいなにが彼をそれほど苛烈な行動に駆り立てたのか。フィンドリーは主人公の恋人の妹と、捕らえられたあとの彼の姿とその最期を知る看護婦の言葉を断片的につむいで、背後に百三十頭の馬をしたがえたまま逃走する男の神話を、再話可能\な日常のレベルに引き戻す。「戦争」とは、ロバートひとりのものでなく、すべての関係者にとっての、すなわち複数の「ウォーズ」であるという厳然たる事実がこうして浮かび上がるのだが、しかし本当に謎は解決されたと言えるのか? 証言者はつぶやく。「人は生きるとき、自分を生きている。誰も他人を生きられないし、誰も他人の知ることを知れはしないのです。その時はその時。ただ一度しかない」と」

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