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★日本経済新聞 プラス1 2003.1.11
知的探求 本のひととき
マイルスでジャズを知る
ジャズはおとなの音楽、都会のムードあふれる音楽、というイメージを抱いている方もいるのでは。でも、荒々しく心を揺さぶり、踊り出したい気持ちにさせるのもジャズである。ひと言では表現しにくい。そんな混とんとした世界をのぞくには「マイルス、デイビス自叙伝」(宝島社文庫・二巻各八○○円)を読むのがいい。ジャズ界の巨人、マイルス・デイビスが自らの「歴史」を語った貴重な本だ。マイルスの生き方は放蕩(ほうとう)、そして無頼。クスリのたぐいで体を壊したときもある。しかし、創造力は並外れている。伝説的なサックス奏者、チャーリー・パーカーから学んだ後、一九五○年代に独自のサウンドを編み出した。さらに、六O年代末から七〇年代前半のころには、ロックミュージックに刺激され、それまでのジャズとは趣の異なるリズム重視の新しい分野を切りひらいた。
「過去の遺物になってしまう気なんか、オレにはまったくなかったってことだ。オレの音楽には未来があった。今だって、それにいつだってそうしてきたように、オレはそれに向かって進むつもりだった」
ロックヘの挑戦状となったアルバム「ピッチェズ・ブリユー」を録音したときの気持ちを語った言葉だ。ジャズを静物にするのではなく、いつも前向きに創造していこうとする。ここにマイルスの真骨頂がある。
ただ、創造の動機はそんなにきれいなものではない。マイルスは常に「かっこよさ」を追求していた。ロックの若いミユージシャンが聴衆をわかせているのを見て「オレならもっと熱』狂させてみせる」と考える。そのときのライブ演奏は今聴いても本当にすごい。
『 死の直前まで最前線にいたから、マイルスを知ればジャズの世界をおおかたは理解できる。一緒に演奏したミユージシャンがいろんな場所で活躍している。この観点からの音楽ガイドとしては、後藤雅洋著「マイルスからはじめるJAZZ入門」(彩流社・一、六○ ○円)が便利だ。本格的にいくなら、中山康樹善一マイルスを聴け!」(双葉社・三、三○○円)が必携だが、これにはまると抜け出せなくなるのでご用心。(K・T)
★『公明新聞』、9/2 村井康司
「……40年代から91年の死まで、マイルスは常にジャズの最先端で活躍し、次々に新しいサウンドを創造し続けてきた。ここ50年ほどのジャズは、マイルスと彼の共演者たちによって担われてきた、と言っても、決して過言ではないのだ。本書は、今までジャズ・ファンの間で経験的に言われてきた「マイルスを聞けばジャズが分かる」という秘伝(?)を、一冊費やしてきっちりと実証してみせた初めての本なのである。
著者は東京・四谷のジャズ喫茶「いーぐる」の店主。……個々のアルバムを選定する鑑定眼の確かさや演奏のについての記述の的確さ……これはもはや入門書という枠を超えた、卓抜な「マイルス論」ひいては「ジャズ論」と言ってもいいだろう。」
★『CDジャーナル』8月号
「ジャズ喫茶“いーぐる”店主の書き下ろし。マイルス・デイヴィスの基本アルバムとして幅広い時代範囲から15枚を選定し、そこに関連付けられる他アーティスト30人を絡ませて、“ジャズの系統聴き”を薦める。“0章”を設け、はじめにサヴォイのパーカーを紹介するところは後藤氏の真骨頂だろう。ロジカルながらも情熱的な筆致は訴求力抜群。少しでも好奇心のある人なら、あれもこれも聴きたくなること請け合いの良質ガイドだ。

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