アイルランド建国の英雄たち

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『アイルランド建国の英雄たち』表紙\

書籍名   : アイルランド建国の英雄たち 1916年復活祭蜂起を中心に
        (アイルランドケンコクノエイユウタチ)
著者名   : 鈴木良平(スズキリョウヘイ) 著
発行日   : 2003-06-24
税込価格 : ¥2940
本体価格 : ¥2800
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★「毎日新聞」 7/20 富山太佳夫
「 そのときジェイムズ・ジョイスは大学生であった。もちろん、20世紀を代表する小説家になってゆく彼のことだから、ひねくれた、頭のいい学生であったに違いない。ところが、教えに来た三歳上の教師というのがアイルランドのゲール語至上主義者で、英語も英文学も不用と主張してはばからない人物。若き日の大作家はあきれかえって、教室を出てゆくしかなかった、という言い伝えがある。別にジョイスでなくても、今風の学生による授業評価をやればさぞかし悪い点のつきそうなこの教師の名前は、パトリック・ピアス。今日のアイルランド共和国の建国の父とも言ってよい人物である。コンピューター産業の成長によるあと押しもあって、現在では経済的な安定を維持できるようになったこの国も、第一次世界大戦のさなかまで、何世紀にもわたってイギリスの属国であり、植民地であった。その状態から脱するための武力蜂起をひきいた人物のひとりが、ジョイスの眼から見れば、ダメ教師だったのである。1916年4月24日(月)、復活祭の休日でにぎわうダブリン市の中心街の平和な雰囲気をつき破るようにして、数百人からなるアイルランド義勇軍とアイルランド市民軍が中央郵便局の建物に入る。その蜂起軍の総司令官として「アイルランド共和国樹立宣言」を読みあげたのが、ピアスだったのである。レーニンの先導したロシア革命の一年半前のことである。しかしこの蜂起は、ロシア革命とは違って、一週間もたたないうちに鎮圧されてしまった。この有名な復活祭蜂起についてはすでにいろいろなことが書かれている。共和国樹立宣言に署名したピアス以下の七人についても、またジョイスや詩人イェイツ他の文学者たちの姿勢についても。だが、一方で、これは大変書きにくい事件でもあるのだ。なぜならば、この武装蜂起にいたるまでの歴史的な背景をまず説明しなくてはならないし、この蜂起を可能にした第一次大戦下の状況を説明しなければならないからである。いや、何よりも、それにからんだ人物たちの思想的な背景がばらばらで、ゲール語至上主義の教育者もいれば、社会主義者もいるし、シン・フェイン党の創設者もいる、アラビアのロレンスを敬愛した男もいるし、のちに共和国大統領となる「二枚舌のマキャヴェリスト」もいる、とても簡単に整理できるものではないのだ。鈴木良平の『アイルランド建国の英雄たち』はまさしくその整理をやってみせた本である。それはピアス、コノリー、コリンズを含む五人(劇作家ショーン・オケイシーのための一章もある)の評伝と思想を簡潔にまとめた、言葉の最もすぐれた意味における紹介書である。わが国ではこのような本がとかく軽視されがちであるが、この本は分量と細密さを誇りとする以外に何の能もないいわゆる専門書何十\冊分もの価値をもつ。しかも話はアイルランドの内側だけに限定されていない。フェニアン問題などをかいしてアメリカとのつながりが説明されるのは当然として、コノリーの政治的立場を説明するために、同時代の幸徳秋水や大杉栄との比較がされたりする。当時の世界各地における国際的な社会主義、民族主義、労働運動などとのからみも十分におさえてある。著者の両足はしっかりと地についていて、この紹介書のかたちをとった本がひとつの確固たる信念の表\明であることを示している」

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