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★『セヌリ』04年11月号
「火山の噴火のように韓国社会を賑わすのが兵役非理事件(ビョンヨクピリサゴン)。今回はドラマ『秋の童話』で一躍有名になったソン・スンホンを始め、多くの俳優・野球選手が兵役逃れをしていたことが発覚、大騒ぎになった。ソ\ン・スホンは謝罪文で、「世間から忘れられてしまうかもしれないと思った」と、動機を告白したが、動きの早い韓国芸能界、ファンが待っていてくれるという保証はないのだ。韓国男児なら誰もがクリアしなければならないのが「徴兵」。韓流の影響もあり、今回の事件は日本でも大きく扱われたので、徴兵制に興味を感じた人も多かったのではないか。そこで、私たちには未知の世界、「徴兵」について書かれた本を紹介しよう。……『韓国陸軍縲怐xは、軍隊生活を体験談とイラストで紹介した「爆笑ノンフィクション」。韓国男子はなぜ「軍隊の話で始まりサッカーの話で終わる」といわれるようになるのか、そんな秘密が解ける強烈な話が満載だ。……新兵訓練が終わり各部署に配属される前に、自殺者の写真を見るのが慣わし。小銃をくわえて自殺、頭部が粉々になった惨い写真の数々が並ぶ。毎年、かなりの兵士が自ら命を絶つ、そんな不気味な現実が韓国軍隊にはある。……(韓国の)徴兵制は一九四四年、日本の手によって施行されたことも記憶にとどめておいてほしい。
★『ダ・カーポ2004年8.18号』
収監者よりも過酷な毎日 韓国・兵役の中の男たち
評者 丸目蔵人 フリーライター
日曜午後ののどかな時間帯、テレビには、なにやら軍服姿のトリオが登場し、軍事教練をネタにしたコントで、盛んに笑いを取っている。といっても、日本で放映されている番組のことではない。韓国の『爆笑オンエアバトル』に相当するバラエティでの一場面だ。
そもそも、韓国ではトンデムン・シジャン(東大門市場〉といった繁華街を歩いていても、軍服姿の若者に頻繁に出くわす。もちろん、彼らがおしゃれでミリタリー・ファッションを着こなしているわけではない。兵役中、外出許可をもらった訓練兵が、しばし羽を伸ばしている日常の光景なのだ。
台湾、シンガポール、タイ。アジアには適齢の男性に兵役義務を課している国が少なくないが、韓国の訓練の厳しさはとりわけ有名。最近の大ヒット映画『シルミド』でも、その壮絶なシゴキは紹介されているが、ネット小説を原作とする恋愛コメディ『猟奇的な彼女』でさえ、脱走兵の願末がエピソードとして・加えられていたことを、この本を読みながら改めて思い出した。
「19歳になったあなたは、一般国民として軍事訓練を受ける義務があります……」
兵務庁からの素っ気ない通知で、否応なく兵役へとかり出された若者たちが、実際どのような体験をするのか? 85年の夏から約2年半〔現在、・兵役は約2年に短縮)、それまでの自由を奪われた著者の苦難の日々がここには図解入りでリアルに紹介されている。
「脳みそ取り出してハイターで洗ってやろうか」
過激な表現でハッパをかけられながら、規律遵守のために、繰リ返される体罰。むさ苦しい男どうしの共同生活は、不恩議とユーモラスな印象を与えるが、それは兵役義務を乗り越えた者ゆえの記憶の美化という自戒もある。
幽霊との遭遇、他愛のない猥談、チョコパイへの執着。そして、愉快な話の合間合間に、明らかにされる真実。適性のない者、不運な者は、ときに過酷な訓練の犠牲となる。
たとえ死亡しても、軍事演習中の場合、兵士への見舞い金はわずか2400円。死亡原因も、他殺が事故死として処理される例があるらしい。
モムチャン。これはひきしまった体を意味する韓国の流行語だが、日本でもブームを巻き起こしている俳優たちのスタイル、さらに精神の素地は、こうした厳しい兵役体験に負う部分もあるのだろう。
一見、軍事マニア向けのようでいて、似て非なる隣国の事情を伝える一冊。エネルギッシュな劇画のように、久々にぐいぐい引き込まれた。

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