田村俊子の世界
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| 書籍名 : 田村俊子の世界 作品と言説空間の変容 |
| (タムラトシコノセカイ) |
| 著者名 : 山崎眞紀子(ヤマサキマキコ) 著 |
| 発行日 : 2005-01-25 |
| 税込価格 : ¥2940 |
| 本体価格 : ¥2800 |
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★読書人 3.11、久保田裕子
「人は複数の名前を持つことがある。ペンネームとして、あるいは婚姻の結果として。日本近代文学史上に「田村俊子」の名を残す女性作家は、「佐藤露英」「町田とし子」「佐藤俊子」の名を持つ他、バンクーバーでは「鳥の子」というペンネームを用い、サンフランシスコでは婚姻名である「鈴木俊子」、中国においては「左俊芝」という中国名を装ったペンネームなどを駆使した国境を越えた表現者でもあった。しかし本書では「複数の名前を持つ作家」(「序論」)のたどった軌跡の中で、主に幸田露伴の門下生としての「佐藤露英」から「田村俊子」へ到るまでの変容が時系列に沿って焦点化されている。例えば「露分衣」には女性同士の運帯が家父長制下の男性の介入によって破られるさまが描かれている。ここでは未だ超越的な視点からの類型的な人物・自然描写にとどまっていた。「あきらめ」では女性の自立への願望と現実との相剋が、主体による〈判断〉や〈断定〉を内包する言文一致体を用いることで女性の自己表出の可能\性を描出した。著者はそれが物語内容だけではなく、文体の形式という文章表現の変容の中に見出せると指摘する。このようにジェンダー規制が言文一致体の獲得によって解体されていく経緯の分析は、一葉以後の明治40年代の女性作家の表現の中で彼女の果たした役割の大きさを示唆している。さらにその後の「生血」「木乃伊の口紅」においては、定点を持たない平板な視点から離脱し、焦点化された自己が、見つめる対象である人物や自然、街の情景との間に感受性を刺激されて揺らいでいく。スタティックで類型的な表\現が捨象され、対象との関係性の中で生きる〈私〉が見出されたとき、新たな「田村俊子」が誕生した」。
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