虚けの舞
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| 書籍名 : 虚けの舞 |
| (ウツケノマイ) |
| 著者名 : 伊東潤 著(イトウジュン) |
| 発行日 : 2006-01-30 |
| 税込価格 : ¥1995 |
| 本体価格 : ¥1900 |
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★『中央公論』5月号、齋藤慎一
本書は戦国時代末に生きた二人の人物を中心に、本能寺の変から小田原合戦までを描く歴史小説である。決して著名とは言いえない人物であるが、この二人を通して、時代の転換点を生きることの難しさを、実にリアルに表現している。豊臣秀吉による朝鮮出兵時の肥前名護屋城に二人は集う。この地でそれぞれが自己の経歴を回想する。回想は紛れもなく自らの没落の過程である。織田信雄は織田信長の次男。本能寺の変で父信長とともに嫡子信忠が、続く賎ヶ岳の合戦で弟信幸が没したことにより、信長の家系を継承する唯一の人物となる。一時は百万石もの石高を持つ大名であったが、秀吉が天下を掌握するにつれて、没落し、肥前名護屋では秀吉の御伽衆の一人で、屈辱を噛みしめ、すべてを失ってしまった人物として信雄を描いている。対する北条氏規は戦国大名北条氏康の正男に設定される。徳川家康や豊臣政権との外交に携わり、天正十八年の小田原合戦では伊豆韮山城で奮戦した。作者は、天賦の才に恵まれながらも、庶子という立場から大家の舵取りを担うことができず、すべてを失った人物として氏規を描く。二人の天運と才覚の差は韮山城攻めで描写される。北条家存続の願いを込めて籠城・奮戦する氏規と、福島正則・細川忠興らの名だたる大名を従えて城攻めをする総大将が信雄である。圧倒的な差にもかかわらず、城を守った氏規と、落とせず解任された信雄という対照はすべてを語っている。肥前名護屋での二人は一つの目的を持っていた。信長と早雲の家系を絶やさぬということ。そのために信雄は屈辱に耐え、氏規は自らの才能を昼の月のごとくに抑えたと描く。結果、ともに大名家として存続する。その達成を作者は「一代の英傑の仕事」と讃えている。
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